Ⅱ アンダンティーノには第1楽章の興奮および活力が全くない。それは素直かつ穏やかな2つの旋律のカンティレーナであり、深みはなく、複雑さもない。それはまだ、弦に加え使用が随意である木管を用いているが、興味を抱かせるのは主にそのスコアリングである。

 これは2つの交替する主題からなっているが、それらの最初の主題のみを総奏の導入部が先行させる。ピアノが入った後、各々の主題は3回提示される。したがって、この楽章は短い導入部と3つの節に分割できる。

 

 

 譜例81譜例82譜例83は、主要主題の冒頭を示したものである。

 細部で最も興味深いのは次の点である。

 譜例821第3節で回帰する弦による「流れるような伴奏」は譜例82のものである。原著は譜例83となっているが、明らかな誤りであるため、本文を修正した。の流れるような伴奏は、第3節でピアノの歌う旋律の下で回帰してくる。

 第1節と第2節のAで、弦が答える24音和音のフレーズに続く第30~35小節、第59~64小節のヴァイオリンの音型である。が、魅力的な小さなコーダはそれに基づいている。         

 Bへのアルベルティ・バスの伴奏;

それは最初の第2節はビオラによって行われる;第3節目は、ヴァイオリンとオーボエを伴奏するためにピアノがそれを使う3第2節のビオラのアルペジオは譜例83のもの、第3節のピアノのアルペジオは譜例84のものである。

 最初の2つの節は似ている。

 第2節は、第1節を新しい調である

 変イ長調(“二重下属調〔double -subdominant〕”)で繰り返すことに自らを止めている。第3節はより変奏曲的であり、主題Bが極めてうまく処理されている(譜例84)

 この楽章での4音和音の存在について触れておくべきだろう。モーツアルトはこのようなダイナミックな効果をめったに使わないが、使う場合は、十分それを意図している。それゆえ、ピアニストは、ここで、またアレグロの独奏の開始部で、それを十分な強さで演奏すべきである。そして、モーツァルトで4音和音に出会った時は、常にそうすべきなのである。

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